命式に「乙卯」と出てきて調べてみると、解説によって「卯月は3月」と書いてあったり「卯月は4月」と書いてあったりして、どちらを信じればいいのか分からなくなります。
この記事では、「卯月」という言葉が二通りの時期を指していることを先にほどいたうえで、乙卯の位置づけと納音の大溪水がどういう仕組みで決まるのかを整理します。


乙卯は六十干支の52番目、乙も卯も陰の木で重なる組み合わせ

乙卯(きのとう)は、十干と十二支を組み合わせた六十干支の52番目です。前は甲寅、次は丙辰にあたります。
十干の乙は陰の木、十二支の卯も陰の木で、同じ五行が同じ陰陽で重なる関係にあたります。陰陽五行では、この関係を比和と呼びます。
なお乙卯は、財団法人の名称や漢詩の題にも使われている語です。本記事が扱うのは、四柱推命や算命学などで使われる干支としての乙卯です。
六十干支という枠組みそのものの数え方は、次の記事にまとめています。
乙卯の読み方と成り立ち|乙と卯が重なるということ
まず読み方と成り立ちです。陰の木どうしが重なるという点が、乙卯を読むときの土台になります。

読み方はきのとう・いつぼう
訓読みでは「きのとう」、音読みでは「いつぼう」と読みます。命式では「乙卯」と2文字で表記されます。
乙は十干の2番目、卯は十二支の4番目です。この2つが組み合わさるのが六十干支の52番目という位置になります。
乙は陰の木
十干の乙は五行では木、陰陽では陰にあたるとされます。同じ木でも、しなやかに伸びる草花にたとえられることが多い十干です。
陽の甲が大きく立ち上がるのに対し、陰の乙は横へ広がるという説明のされ方をします。ただしこれは比喩で、性格を決めるものではありません。
卯も陰の木
十二支の卯も、五行では木、陰陽では陰にあたるとされます。方位では東、季節では春の盛りに配当されるとする解説が一般的です。
十干と十二支のどちらを見ても陰の木、という点が乙卯の特徴になります。
比和とはどういう重なり方か
相生や相剋のような向きのある関係と違い、比和には「生む・抑える」の向きがありません。同じ気がそろっている状態として説明されます。
この重なりが、あとで出てくる納音や暦注の説明にもつながっています。
卯の蔵干は本気が乙とされる
十二支のそれぞれには、内側に収まっている十干があるとされ、これを蔵干と呼びます。卯の蔵干は本気が乙とされ、ここでも乙が重なる形になります。
蔵干にどこまで含めるかは解説によって異なるため、本記事では複数の資料で一致していた本気の乙だけを挙げます。
乙卯の年と日はいつか|60年周期での数え方

月の話に入る前に、年と日を片づけておきます。この2つは数え方が単純です。
| 数える対象 | 数え方 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 乙卯の年 | 西暦年を60で割って55が余る年。60年ごとに巡る | 1915年・1975年・2035年が該当。手元の年は60で割った余りで確かめられる |
| 乙卯の日 | 60日ごとに一巡する。計算式で覚える形ではない | 万年暦か命式作成ツールで生年月日を入れて確認する |
| 年柱の切り替わり | 元日ではなく立春で切り替わるとされる | 1月から立春の前日までに生まれた場合は前年の干支になる |
1975年生まれでも、1月から立春の前日までに生まれた人は前年の甲寅として扱われます。生まれ年だけを見た一覧表がずれるのは、この切り替わりが反映されていないためです。
乙卯の月はいつを指すか|卯月の数え方と旧暦とのずれ
ここが本記事のいちばん大事な部分です。「卯月」という言葉は、二通りの時期を指して使われています。この二つを分けないまま読むと、どの解説も矛盾して見えます。

旧暦の異称でいう卯月は4月
睦月・如月・弥生と続く旧暦の月の異称では、卯月は4番目、つまり4月にあたります。学校で習うのはこちらの意味です。
この「卯月」は月の呼び名であって、十二支の配当とは別の系統から来ています。
四柱推命の節月でいう卯月は啓蟄から清明の前日まで
一方、四柱推命で使う節月では、卯の月は啓蟄から清明の前日までを指します。新暦でいえば、およそ3月上旬から4月上旬です。
十二支の配当でいえば、卯の月は旧暦の2月にあたります。旧暦の異称でいう卯月(4月)とは、2か月ぶんずれています。
乙卯の月は西暦年の下1桁が3・8の年にあたる
その年の十干が決まると、各月に割り当てられる干支も決まります。乙卯の月にあたるのは、西暦年の下1桁が3または8の年(十干でいう癸の年と戊の年)です。
同じ年の一つ前の月、つまり寅の月は甲寅になります。乙卯の月は、その次に来る月ということになります。
「3月」とだけ書かれた解説を読むときの注意
解説に「卯の担当月は3月」とだけ書かれていたら、それは節月の話です。「卯月は4月」と書かれていたら、旧暦の異称の話です。
どちらが正しいかではなく、どの数え方で書かれているかを先に確かめる。それだけで矛盾は消えます。
納音の大溪水とは|甲寅と乙卯で1つの組

乙卯を調べると「大溪水(だいけいすい)」という語が出てきます。これは納音(なっちん)という枠組みの中の呼び名です。
納音は六十干支を2つずつ組にして30に分ける枠組み
納音は、六十干支を2つずつ組にして30種類に分け、それぞれを木・火・土・金・水のいずれかに割り当てて名前を付けたものです。「◯◯木」「◯◯水」といった形の名前が並びます。
2つずつ組になるので、隣り合う干支は同じ納音の名前を持ちます。これが「なぜ隣の干支と同じ名前なのか」の答えです。
甲寅と乙卯の組が大溪水にあたる
51番目の甲寅と52番目の乙卯が同じ組になり、この組の納音が大溪水です。名前に「水」が入っていますが、十干も十二支も木である点とは別の分類だと考えてください。
納音の五行と、十干十二支そのものの五行は別の系統です。ここを混同すると読み方が合わなくなります。
読み方はだいけいすい
「大溪水」は「だいけいすい」と読みます。溪は谷川を指す字で、谷を流れる水にたとえた名前です。
名前のたとえから意味を膨らませる解説もありますが、たとえは説明のための言葉です。そこから運勢を断定する読み方はしません。
納音の意味づけは解説によって幅がある
納音をどこまで重視するかは、解説によって差があります。命式の読みに組み込む立場と、参考程度に扱う立場の両方があります。
本記事では、納音の仕組みと名前が確認できた範囲を書きました。意味づけについては一致が取れなかったため、踏み込んでいません。
乙卯は異常干支に入るのか|挙げる説と挙げない説

乙卯についても「異常干支」という語が出てくることがあります。ここは説が分かれるので、そのまま示します。
異常干支は算命学で使われる言葉
異常干支は算命学の側で使われてきた呼び方で、六十干支の中の一部を指すとされます。四柱推命の入門的な解説では、まず目にしない語です。
挙げられる干支の顔ぶれは流派ごとに違っていて、どこかに定まった一覧があるわけでもありません。
乙卯を挙げる説がある
異常干支の一覧に乙卯を含めている解説があります。含める理由の書き方も、解説によってそろっていません。
どの解説がどの根拠に基づくかまでは、本記事では確認できませんでした。
挙げない説もある
乙卯を挙げていない解説もあり、異常干支という枠組み自体を扱わない解説もあります。「乙卯は異常干支である」とも「ではない」とも、一律には言えない状態です。
一覧の内容が食い違っていても、どちらかが間違っているとは限りません。流派が違えば扱う枠組みも違う、というだけのことです。
読み比べる前に立場を確かめる
調べるときは、開いたページがどちらの立場かを先に確かめてください。立場の違うページを並べて読むと、矛盾しているように見えるだけです。
良い悪いの評価として読まない
「異常」という語感から不安になる方がいますが、これは分類の名前であって判定ではありません。何かが起きる予告でもありません。
医療・法律・お金に関わる重大な判断は、占いではなく各分野の専門家にご相談ください。
乙卯に語られる性格の傾向

性格に関する記述はどれも一次情報ではありません。ここではいくつかの解説に重なって出てくる部分だけを、伝えられてきた範囲として並べます。
複数の解説に共通して挙がるもの
共通して出てくるのは、周囲に合わせながら自分の形を保つこと、環境に応じて伸び方を変えること、粘り強さです。陰の木が横へ広がるという比喩と重ねた説明になっています。
比和で気がそろっているとされることから、外から見えるより内側が一貫している、という書かれ方をすることもあります。
女性・男性で分けた記述はそろっていない
乙卯についても、女性の特徴・男性の特徴と見出しを分けている解説が見つかります。ただし中身を並べると、解説どうしで書いていることがそろっていませんでした。
一致していない記述を並べると、読む人によって受け取り方が変わってしまいます。本記事では男女で分けずに扱います。
傾向として読み、決めつけに使わない
命式に乙卯があることは、その人の一部を説明する材料にすぎません。四柱推命は複数の柱を合わせて読む体系なので、1つの干支だけで人物像は決まりません。
当てはまらない記述があっても、それは矛盾ではありません。
乙卯の相性は関係の形から読む

相性についても、良し悪しの一覧は作りません。乙卯に関わる関係の「形」だけを挙げます。
干合とされる乙と庚
十干どうしの特別な結びつきを干合といい、乙は庚と干合するとされます。性質の異なる十干どうしが手を組む形だと説明されます。
結びつく形だからといって、そのまま相性が良いと読む扱いはされていません。
支合とされる卯と戌
十二支どうしの結びつきのうち、卯は戌と支合するとされます。二支が組んで働く関係の名前です。
これも評価ではなく、組み合わせの形を指す言葉です。
三合とされる亥・卯・未
3つの十二支が組んで一つの五行の働きをまとめる関係を三合といい、卯は亥・未と三合の関係にあるとされます。
命式の中にこの3つがそろっているかで読み方が変わる、という扱いをする解説もあります。
冲とされる卯と酉
向かい合う十二支どうしの関係を冲といい、卯は酉と冲になるとされます。正面から向き合うぶん、動きが出やすい関係だと説明されます。
冲が出ているというだけで、合わない相手だと決めることはできません。
相性の一覧より関係の形から読む
六十干支どうしの相性の一覧もありますが、内容は一致していません。関係の形から自分で読むほうが、混乱しにくくなります。
卯年と相性が悪いとされる干支については、別の記事で扱っています。
同じ「卯月」という言葉が別の時期を指していると知ると、これまで読んだ結果をどう受け取ればよいのか分からなくなります。前提が違っていたのか、読み方を間違えていたのかを、自分では確かめようがないからです。
電話占いヴェルニは、四柱推命や算命学を掲げる鑑定士に電話やチャットで相談できるサービスです。どの数え方で読んでいるのかを含めて聞けるのが、対話の利点です。
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乙卯についてよくある質問
※本記事の干支の解釈は伝統的な解釈・心理的な観点に基づく一般的な傾向であり、科学的に効果や的中を保証するものではありません。参考の一つとしてお読みください。
まとめ|乙卯は「いつを指す乙卯か」を確かめてから読む
乙卯は六十干支の52番目で、乙も卯も陰の木という重なりの組み合わせです。前の甲寅と2つで一組になり、納音では大溪水にあたります。
年は西暦を60で割って55が余る年(1915年・1975年・2035年)、日は60日ごとです。年柱は立春で切り替わるため、1月生まれは前年の干支になります。
いちばん混乱しやすいのが月です。旧暦の異称でいう卯月は4月、四柱推命の節月でいう卯月は啓蟄から清明の前日まで。どちらの数え方で書かれた解説かを先に確かめてください。